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秘密の楽園 / Produced by ぴの

第2章 秘密の楽園 1

☆m


長い睫毛が影を落とす目元。


それは影のせいだけではなくクマにも見える。


真っ白な頬にぼんやりと。


ただでさえ色白なかずの手は、部活で外を走る俺のそれと見比べてみても白さが際立ってはいるけど。


今日の頬は白いと言うより青白い?


心なしか顔色も悪い気がする。


…勉強しすぎじゃねぇの。


どんなに家の中がいいっつっても少しぐらいは外に出た方がいいんだ。


前みたいに勝手についてきてくれたらいいんだけど最近は誘ってもついてこないし。


つーか、誘うことすらできねぇんだよな…


隣でぐらぐらと揺れている頭は落ちそうになっては元に戻る。


何度も何度も繰り返しているのに目を覚ます気配など全くない。


そんなに眠いなら大人しく甘えたらいいじゃん…


僅かに空いていた距離を詰め、じわりと左側に感じる温もり。


その微かな衝撃にぴくっとかずが動いた気がしたけど、そんなのは無視で自らの肩にかずの頭を乗せた。


「…寝てていいよ」


そっと掛けた問いかけに返事などない。


肩に掛かりきらない乗っかったままの頭からかずの拒否を若干感じるけど。


俺はお前の兄ちゃんなんだから。


少しは頼ってよ…


頭を預けるようにもう一度ポンポンと撫でてやったら少しずつ重みが掛かってくる。


いいポジションを探すように微かな動きを見せたかずの頭がようやくある場所で止まり、呼吸がゆっくりと落ち着いていく。


人も疎らな車内。


車体が揺れる度に響く一定の律動。


そして聞こえてきた微かな寝息。


間近に感じるかずからはまだ僅かにシャンプーの名残を感じる。


やっべ…


寄りかからせちゃったけど汗臭くないかな、俺。


…ま、いっか。


かずの匂いと肩に掛かる重みが妙に心地いい。


なんだか久々にお兄ちゃんできてる気がする。


「…くふふ」


そうなりゃ無意味にスマホを弄り続けるなんて勿体ない気がして。


とっととポケットにしまって俺もそっと目を閉じた。

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