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秘密の楽園 / Produced by ぴの

第2章 秘密の楽園 1

☆m


「痛てぇ…」


主のいなくなった部屋にひとり。


足元に散った雑誌を拾い上げ、机に戻すついでにパラパラと中を見た。


ちぇ、何だよ。


あれくらいで怒ってさ。


と言うのも、ちょっぴりオトナになったのかもしれない弟に兄としてアドバイスしただけっつーか。


開かれたページを見て浮かんだ疑問を訊ねた時だった。


「かずのタイプってこんな子だっけ?」


見るからに美女ってのが前から好きだと思うんだけどな、かずは。


色白で美人さんって感じの。


ほら、あの小学校の時に同じクラスだっためぐちゃんとか。


でもかずがじっと見つめていたのはこんがりと日焼けして、ハツラツとした感じの女の子。


なんかこう、思ってたタイプと全然違ったから単に訊いてみただけなのに。


「んなっ、なにがだよ」


妙に焦ってるその姿にピンと来た。


もしかしたらかずには好きな子がいるんじゃないか。


「何ばかなこと言ってんだよ」とイヤホンを仕舞う手つきがいつもより乱暴で、やけに早口なのもおかしい。


中学時代には浮いた話のひとつもなかったかず。


好きな子について訊ねてみても「いないよ」と返ってくるだけで全然青春してないヤツだったのに。


ついに好きな子ができたのか。


それならば…


「ちょっと待ってて!」


かずの部屋を飛び出し、駆け込んだ向かいの自室。


机の三番目の引き出しからあるモノを取り出して急いでかずの部屋へと戻った。


「かず、これ持っとけ」


自分の手からかずのへと移し、ぎゅっと握り込ませたのは…


「っ…!何だよこれっ…!」


開いたかずの手にちょこんと乗っかるソレ。


それは所謂コンドームってやつで。


その存在に気づいたかずはハッと目を丸くした瞬間、耳まで真っ赤に染め上げた。


「かずも近々必要になるかもしれないから」

「っ、ばっかじゃないの!」


かずはソレを床に叩きつけると、雑誌を手に取り俺に向かって思いっきり放り投げた。


「おいっ…!危ねぇな」

「知るか!風呂入ってくる」


そうしてドンドンと荒々しい足音を立ててかずは部屋をあとにした。

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