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秘密の楽園 / Produced by ぴの

第3章 秘密の楽園 2

◆c


大野さんの話によれば…あ、あの何考えてるか分からなそうな人は演劇部部長の大野さんと言って。


どうやらかずに演者としての才能を見出してるらしい。


だからどうしても口説き落としてくれと頼まれたけど、その内容を聞いて一つ返事で頷けなかった俺。



『兄貴に恋心を抱く弟役…?』

『そう。かずならいい演技してくれそうなんだよ』

『はぁ…』

『ちなみに兄貴は俺』

『え?あ…大野さんが…?』


そう言ってふにゃりと笑う瞳の奥が妖しげに光ったような気がして、思わず背筋がゾクッとしたんだ。


頼んだぞと肩を叩かれてしまったけど、内容が内容なだけに今の俺とかずの距離感じゃ説得は難しいような気がする。


それに…


なんとなく、この役はかずにやってほしくない。


別に兄貴役を俺と重ねてる訳じゃないけど、なんていうか…


例え演技でも俺以外の人に『兄貴』として接するかずを見たくないっていうか。


ましてや恋心を抱くなんてさ…


って、これじゃまるで俺が大野さんにヤキモチ妬いてるみたいじゃん。


かずをとられるって思ってんのかな、俺。


こんなことかずに言ったらそれこそ”ばかまさき”で片付けられるに決まってる。


兄貴として説得…
かなりハードル高そうだけど、大野さんはかずの直属の先輩にあたるし。


…やってみるしかないか。


そう小さく意気込んで、家に帰り着いたその足で二階のかずの部屋へ向かった。



ノックをすればすぐに小さな返事が中から聞こえて。


顔を覗かせて部屋に入ると、目が合うなりふいっと逸らされる。


こんなのはもう慣れたもので。


「かず、今ちょっといい?」


にっこりと微笑みながらベッドの端に腰掛け、机に向かうかずの背中に話しかけた。


「お前部活入ったんだって?演劇部らしいじゃん」

「っ…それがなに」

「いやそんなの知らなかったからさ、びっくりしちゃって」

「別に…まさきには関係ねぇじゃん」


穏やかに話しかける俺とは対照的に、どことなく緊張したように俺の方を気にするかずの目線。

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