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秘密の楽園 / Produced by ぴの

第3章 秘密の楽園 2

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「かずがお芝居に興味があったなんて、全然知らなかった」

「…別に、部活に入らなきゃいけないから適当に入っただけ」

「そうなの?」


何かを真剣に書く素振りをしてるけど、どう見たって文字を書いてる感じじゃない。


またお決まりのキャラでも描いてるんだろうな。


かずは手持ち無沙汰になるとすぐ落書き始めるんだ。


そういうところ、全然変わってない。


「くふふ…」


思わず漏れてしまった笑いに気づいてかずがじっとりと睨みつけてくる。


「何?」

「んー、何でもない」


ついにやにやしちゃう俺にチッと舌打ちをひとつ。


再び机へと向かってしまったかずはさっきよりも乱暴にペンを走らせてる。


……自分は秘密ばっかりのくせに、俺が隠し事するとすぐ拗ねるんだから。


そうして拗ねるかずも可愛いんだけど、だからこそかずには隠し事できない。


つーか、したくないんだよね。


「かずは裏方希望なんだって?」

「っ、なん…」

「部長さんに聞いた」

「はぁ?」


勢いよく頭を上げたかずは目をまん丸くしていて。


やっとこっち見てくれた。


二人で話してるのにかずの顔が全然見えないなんて淋しいじゃん。


驚き顔だし、怪訝そうにし始めちゃったけど全く見れないよりマシ。


「…何でまさきが大野さん知ってんの?」

「あー…まぁ偶然?出会っちゃった」

「は?」


隠し事はしたくないけどこの話を掘り下げるのはまずい。


俺が演劇部に偵察しに行ったのがバレちゃう。


そしたらまたかずにシャットアウトされちゃうかもしれないからここは流しておこう。


「かずに演者してほしいって言ってたよ」

「んな…」

「やってほしい役があるんだって」


すると唇をむにむにと動かしながら「あの人まだ諦めてないのかよ…」なんてぶつぶつ言ってる。


「やってみたら?」

「はっ…何言って」

「かずは俺と違って器用だから何でも上手にできるじゃん。部長さん自らかずにお願いするなんてすごいもん」


説得してって言われたからね。


約束した訳じゃないけど一応役目を果たさないと。


「かずのやりたい役でもいいからやってみたら?」


だけどやっぱりあの役は押し付けたくなくてちょっとだけズルをした。

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