テキストサイズ

秘密の楽園 / Produced by ぴの

第4章 秘密の楽園 3

◆c


人波に逆らいながら指定された待ち合わせ場所へと向かう。


完全に逆走状態で歩くのは至難の技で、 人との近過ぎる距離に顔を顰めつつ。


そんな時ふと浮かんだ満員電車でのかずの顰めっ面。


こんなクソ暑い人混みの中で、かずはちゃんと友達と落ち合えてるんだろうか。


なんて、この状態を目の当たりにしたらどうしたってかずのことを考えてしまって。


…違う違う。
俺はブラコンじゃねぇし。


今日はアイツのことを考えるのはよそう。


「おい雅紀っ!」


少し開けた前方から聞こえた声に目をやれば、片手を伸ばして手招きをする翔ちゃんが。


「居た!ごめん遅くなって!」

「いやいいよ、つぅかすげー人だなやっぱ」


周りを見渡しながら苦笑いをする翔ちゃんの背後、緊張気味にこちらを窺う眼差しと目が合う。


「こ、こんばんは…」

「あっ、えっと…?」

「あぁコイツ、松本」


部活の後輩って翔ちゃんに紹介されて、その松本くんがぺこりとお辞儀をした。


目鼻立ちがハッキリしてて絵に描いたようなイケメン。


こんな華やかな子サッカー部に居たんだ。


「松本ってスゲーんだぜ。中学ん時は県選抜でさ、うちにも特待で入ったし」

「ちょ、翔さんっ…」


ドヤ顔で自慢気に話す翔ちゃんに、たちまち顔を赤くして制止をかける松本くん。


「いいじゃんホントのことなんだし」

「っ、もぉ…」


赤い顔のまま翔ちゃんを睨んでるけど、なんかこの子見た目と違って随分シャイなんだな。


「松本くん、今日はごめんね?俺入り込んじゃって。
えっと、俺バスケ部の相葉。翔ちゃんと同じクラス」

「えっ、相葉って相葉和也の…?」


俺の言葉に弾かれたように顔を上げた松本くんの口からかずの名前が出て。


「え、かずのこと知ってるの?」

「あ、和とは同じクラスで…じゃあ和のお兄さんですよね?」

「うん、そうだけど…」

「そっか…ふふ」


え?なに?
何で笑ってんの…?


「あ、すみません。和がよく話すんです、お兄さんのこと」

「えっ?」

「ふふっ…でも言ったら怒られるんで秘密にしときますね」


そう言ってニカっと笑う松本くん。


その笑顔がやけに思わせぶりで、途端に胸がざらつき始めて。


何だよ…
かずのヤツ俺のどんな話してんだよっ!

ストーリーメニュー

TOPTOPへ