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秘密の楽園 / Produced by ぴの

第4章 秘密の楽園 3

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出店が両脇に並ぶ石畳。


赤やオレンジ色の灯り、鮮やかな浴衣。


すれ違う人たちの顔を華やかに照らす。


仲良く話しながら二、三歩前を歩く二人をぼんやりと見つめながらただついていくだけ。


先輩後輩の関係にも拘らずすっかり打ち解けている様子の二人に、かずもこんな風に誰かに笑いかけながら祭りを楽しんでいるのかな。


なんて。


かずのことは考えないって決めたけど、松本くんの言葉のせいでどうしたってかずがチラつく。


「なんか…似てますね、和とお兄さんって」


クスクスと笑った松本くんの言葉にはどういう意味があったんだろう。


一体、どこを似ていると感じたのか。


いつもなら自他ともに認める似ていない見た目を第一声に言われるのに。


似ているパーツがどこかにあるのか、それともかずから何かを聞いているからか。


楽しそうにあっちこっちと指を差す松本くんの後ろ姿を眺めていると、それがかずの姿にダブって仕方ない。


どこにいるのかな…


周りを見渡してみても見知らぬ顔が並ぶだけ。


かずらしき人は見当たらない。


…そりゃそうか。


どれだけの人が集まってると思ってんだ。


よほど引きが強くなきゃこんな人混みの中で出会えるはずがない。


「おい、雅紀!」


聞こえた翔ちゃんの声に進行方向へと視線を戻せば二人ははるか前の方。


いつの間にか随分遅れてしまっていたようで慌てて人波を掻き分けた。


「ごめん、翔ちゃん!」

「いや、平気。松本とも話してたんだけどだいぶ時間が迫ってるからさ、買出しと場所取り手分けしようぜ」


人の流れもかなり足早になっている。


近付くメインイベントに我先にと見晴らしのいい場所を探しているみたい。


「うん、その方がいいね」


翔ちゃんの指示で俺と翔ちゃんが買出し、松本くんには場所取りを割り振られた。


「じゃ、十分前には集合しような」


翔ちゃんと買う物が被らないように軽く相談してから、それぞれ目的のものを探して再び出店へと繰り出す。


どこにあるかな…


途中見かけたりんご飴が一瞬行く手を妨げたけど、先に割り振られたものを買わなきゃと先を急いだ。

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