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秘密の楽園 / Produced by ぴの

第4章 秘密の楽園 3

◆c


美味しそうに湯気を立てる焼きそばを、ハチマキをしたおじさんが豪快にパックに詰めている。


おいおいフタ閉まんの?と心の中で思っていると、ふいに横から掛けられた声。


振り向くとそこには、ピンクの花柄の浴衣を着たマネージャーが居て。


「おぉ、びっくりした!え、来てたんだ」

「うん。なに、相葉くんもしかして一人?」

「っ、違ぇし!友達と一緒だし!そっちは…?」

「え?ふふっ」


何やら意味ありげな返答。


ふーんそっか、こないだ彼氏出来たって言ってたっけ。


「…良かったね、花火大会に間に合って」

「何よそれー。そんなこと言ってる暇あったら早くいい人見つけなさいよ」

「へっ、余計なお世話だっつーの」


あからさまに嫌味を言ったもののドヤ顔で返ってきた嫌味。


相手が居るヤツに何を言ったところで所詮負け犬の遠吠えか。


おじさんから貰った焼きそばは案の定フタが閉まりきってなくて。


それを二人してクスクス笑い合っていたら、今度は反対側から声を掛けられ。


「よぅ、兄貴」


ふにゃりと笑いながら片手を挙げて近付いてきたその人に、思わず心臓がドキッと高鳴った。


「っ、大野さん!どうも…」

「お?もしかして彼女?」

「いや違います!部活のマネージャーで…」


いつの間にか呼ばれてた”兄貴”に戸惑う暇もなく、慌ててマネージャーとのことを訂正する。


大野さんにはあれ以来学校でも会ってなかったから。


つーか会わないようにしてた。


だってかずを説得できなかった負い目を少なからず感じてたし…。


「なんだ違ぇのか。てっきり彼女かと思った」


そう言ってヘラっと笑うと「おじさん、焼きそばふたつ」と小銭を手渡した。


あ、そういえばかずは部活の仲間と来るって言ってたよね。


大野さんは別行動なのかな。


「あれ?いねぇな…」


そんな事を思っていると、急に思い出した様に周りをキョロキョロしだした大野さん。


「どうしたんですか…?」

「いや、かずが居なくなっちった」

「えっ⁉︎」


何でもないように言ってるけど…何だって⁉︎


「さっきまでその辺に居たんだけどなぁ」

「ちょ…一緒なんですか⁉︎」

「うん、二人で来た」

「二人っ⁉︎」

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