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秘密の楽園 / Produced by ぴの

第4章 秘密の楽園 3

◆c


「…部活の友達と来るって言ってたよな?
なんで大野さんと二人なんだよ」

「っ、別にいいじゃん…なんでダメなんだよ」


尚もぐっと眉間に皺を寄せて口答えするかず。


なんでダメかって聞かれたら即答はできないけど、そもそもなんで俺にそんな嘘をつく必要があんの?


嘘をついてまで俺とここに来たくなかったってことなのかよ。


さっきまでかずの泣きそうな顔ばかりが浮かんでたのに、いざ対面したその時から微塵もそんな素振りが見られなくて。


しかも相変わらずのああ言えばこう言うってスタンス。


ことごとくそんな態度を見せるかずに段々苛立ちが募って、中途半端に掴んでいた手首にぎゅっと力を込める。


「っ…離せよっ!大野さんが待ってんだからっ…」

「なぁお前さ…そんなに俺のこと嫌いなの?」

「っ、な…」

「嫌いならはっきりそう言えよ。なんで回りくどくそんな嘘つくんだよ」


走ってきたせいもあってかまだ熱く火照った体。


久し振りに湧き上がってくる言い様のない感情に、積もりに積もった想いが次々に言葉となって溢れてくる。


「大体な、俺のこと何だと思ってんだよ。
話しかけりゃ無視しやがって…どういうつもりだよ」

「っ…う、うるさ、」

「またそれかよ!何でもそれで片付けられると思ってたら大間違いだからなっ!」


コントロールを失いかけた理性では声のボリュームも抑えられなくて。


それに一瞬ビクッと肩を揺らしたかずが、堪えるように唇をグッと噛み締めた。


「ほ、ほっとけよ…
俺のことなんかどうでもいいくせに…」

「…は?何言って、」

「勝手にっ…勝手に彼女なんか作りやがってっ…」

「は?彼女…?」


目の前で瞳を揺らしながらそうぶつけてくるかずに、ふとさっきのマネージャーの姿が脳裏を掠める。


そういえばかずが居なくなったのはあの焼きそばの屋台に居た時で。


もしかして…
俺とマネージャーが一緒に居た場面をかずは見てたってこと…?


「違っ…あ、あれはマネージャーだって!彼女じゃな、」

「うるさいっ!まさきこそそんな嘘つくなよ!
も…離せっ!触んな!」


そう叫んで思いっきり手を振り解くと、そのままドンっと胸を押された。

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