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秘密の楽園 / Produced by ぴの

第4章 秘密の楽園 3

☆m


そのタイミングでまたも打ち上がる花火。


かずからの衝撃に立ち尽くす俺の背中にドンと重い打上げ音が追い打ちをかけてくる。


それなのに煌めく火の粉がかずを照らして。


っ…


その儚さに息を飲んだ。


「俺も今日は帰らないから」

「はっ?…つーか何だよ、俺もって」

「見てないの?」


途端に表情は一変、眉が怪訝そうに歪む。


「母さんから連絡来てる。日帰りのつもりだったけどせっかくだから泊まろうかなって」

「えっ?」


慌ててスマホを見れば翔ちゃんから数え切れない程の着信に紛れて母ちゃんからのメッセージが一通。


マジか…


別にガキじゃあるまいし、母ちゃん達が泊まってくることには何の文句もない。


むしろ目一杯満喫してきてほしいと思っている。


だけど、となると今夜はかずと二人きりなワケで…


って、待て!


「おい、かず。お前まで帰らないってどういうことだよ」


高一のかずが一晩を過ごせる場所なんてどこにもないはずだろ。


もしや…


「まさか…大野さんと?」


かずが二人きりで出掛けるなんておかしいと思ってた。


しかもそれが花火だなんて早々ない。


「だったら?」


さらにその後にお泊まりまでしてくるって…


分からない、分からないけど…


不埒な方にしか考えが向かない。


かずは男で大野さんも男。


それなら一晩ゲームをしてって過ごし方もあり得るはずなのに、どうしてかイケナイ方に思考が働いてしまう。


それもこれもきっとあの役のせい。


『兄に恋する弟』役なんて…


そんな役柄を聞いてしまったせいで大野さんに恋するかずの画が頭の隅っこに浮かんでは消えるんだ。


「…二人きりで花火見て、泊まり?」


そんなのあり得ないって思ってるのに。


いや、俺が認めたくないだけなのかな。


かずが大野さんに恋してるって。


「お前ら、そういうことかよ…」

「……は?」

「俺なんかに構ってられないって?」

「何言って…」


だからずっとかずは俺のことを避けてたんだろ?

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