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秘密の楽園 / Produced by ぴの

第4章 秘密の楽園 3

◆c


そう思ってしまうとこれまでのかずの態度の全てに合点がいく。


昔みたいに他愛もない話をしたり、外に連れ回して遊んだり。


今でもかずとそういう仲良し兄弟でいたいってずっと思っていたのは俺だけだったんだ。


年頃のかずにとってはさぞかし俺みたいな兄貴ウザかっただろ。


なんだよ…


こんな全力疾走してかずを必死に探してた自分がバカみたいじゃねぇか。


ぎゅっと握る拳に力がこもる。


この感情の名前は一体なんなんだろう。


悔しさなのか怒りなのか寂しさなのか。


表わしようのないそれがふつふつと体の奥から湧き上がってくるようで。


「そうかよ…分かったよ…」


思ったより低い声が出てしまった自分に内心驚く。


コントロールできない感情に乗って声も僅かに震えていた。


「…え?」


聞き返したかずの声もまた小さく消えそうで。


それにさっきの威勢はすっかりその姿を消し、どこか不安気に窺う瞳が向けられる。


…もう俺はかずの兄貴としても必要なくなったってことだろ?


そんな顔するなよ。


そんな顔したってもう知らねぇから。


だってもうこれからは大野さんに守ってもらうんだろ?


「…じゃ、俺も行くから」

「ぇ…どこ…行くの?」


縋るように見つめてくる瞳から視線を逸らしてぽつり呟く。


行く当てなんてどこにもないけど。


でも…もう俺の居場所は…


…俺の『兄貴』としての居場所はここにはないから。


「…かずには関係ないだろ」

「っ…」


いつもかずが言うセリフでそう切り捨てれば、一層悲しそうに下がる眉と途端に水分量が増した瞳。


っ…


怯みそうになった気持ちをグッと奮い立たせ、これ以上は見ていられないとクルリと背を向けた時。


「待ってっ…!」


砂利を踏み締めた音と同時に届いた声と。


どんっと背中にぶつかってきた衝撃に思わず足を止めた。


「行かないでよ…まーくんっ…」


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