秘密の楽園 / Produced by ぴの
第5章 秘密の楽園 4
☆m
スッキリしたのは汗を流した身体だけ。
頭の中は未だ風呂場にいるかのようにもやついたまま。
やたらと煩い胸の鼓動に『落ち着け』と咎めてもあまり変化が見られなくて。
仕方なく深呼吸をひとつしてリビングのドアを開けた。
カチャっと遠慮がちな音。
それにかずは反応することもなくソファで縮こまっている。
別に隠れなきゃいけないワケじゃないんだけど、どうしても摺り足になるのは風呂場で過ぎった余計な発想のせい。
かずと顔を合わせたところでどんな反応していいのか…
その答えも出ていなければ、そもそも自分がどうなっちゃうのかも分からない。
だけど…
先に風呂に入ったからには声を掛けねば。
カチカチと進む壁掛け時計の秒針。
そっと様子を窺ってみるとどうやらスマホを弄っているらしい。
大野さんに連絡してんのかな…
チクリと刺す胸の痛みにふるふると頭を振っていた時、かずがハッと顔を上げた。
「なんだ、出てたんだ」
「えっ…あ、うん…」
だめだ。
やっぱりどう接していいのか分からない。
かずは弟だし余計なこと考えずに今まで通り接したらいいはずなのに。
今まで通りってどうしてたっけ…?
考えようにも冷静とはとても言えない頭では何にも浮かんでこなくて。
思わずキッチンへと逃げ込み冷蔵庫を開けて視線を塞いだ。
「か、かずも風呂行ってきな」
ミネラルウォーターを探すフリをして、冷蔵庫の扉に隠れている間もなんとなく感じる視線。
きっとかずだって俺の目の前に目当てのものがあるって分かっているだろうから。
いつまでも顔を上げない俺を不審に思っているのか。
それとも何か言いたいことがあるのか…
「じゃあ…」
「っ…!」
ガコンッ…
かずの声に、持ち上げようかどうしようかと迷っていた手が滑って鈍い音が響いた。
こんなの動揺してるって丸分かりじゃん…
そそくさとペットボトルを拾い上げ素知らぬ顔で口を付けた。
頭がキンとするほど冷たく感じる。
そんなところからもいつもと違う自分を感じてしまって。
「俺も風呂行ってくるね」
”まーくん…”ってかずの声に吹き出しそうになるのを必死に堪えた。
スッキリしたのは汗を流した身体だけ。
頭の中は未だ風呂場にいるかのようにもやついたまま。
やたらと煩い胸の鼓動に『落ち着け』と咎めてもあまり変化が見られなくて。
仕方なく深呼吸をひとつしてリビングのドアを開けた。
カチャっと遠慮がちな音。
それにかずは反応することもなくソファで縮こまっている。
別に隠れなきゃいけないワケじゃないんだけど、どうしても摺り足になるのは風呂場で過ぎった余計な発想のせい。
かずと顔を合わせたところでどんな反応していいのか…
その答えも出ていなければ、そもそも自分がどうなっちゃうのかも分からない。
だけど…
先に風呂に入ったからには声を掛けねば。
カチカチと進む壁掛け時計の秒針。
そっと様子を窺ってみるとどうやらスマホを弄っているらしい。
大野さんに連絡してんのかな…
チクリと刺す胸の痛みにふるふると頭を振っていた時、かずがハッと顔を上げた。
「なんだ、出てたんだ」
「えっ…あ、うん…」
だめだ。
やっぱりどう接していいのか分からない。
かずは弟だし余計なこと考えずに今まで通り接したらいいはずなのに。
今まで通りってどうしてたっけ…?
考えようにも冷静とはとても言えない頭では何にも浮かんでこなくて。
思わずキッチンへと逃げ込み冷蔵庫を開けて視線を塞いだ。
「か、かずも風呂行ってきな」
ミネラルウォーターを探すフリをして、冷蔵庫の扉に隠れている間もなんとなく感じる視線。
きっとかずだって俺の目の前に目当てのものがあるって分かっているだろうから。
いつまでも顔を上げない俺を不審に思っているのか。
それとも何か言いたいことがあるのか…
「じゃあ…」
「っ…!」
ガコンッ…
かずの声に、持ち上げようかどうしようかと迷っていた手が滑って鈍い音が響いた。
こんなの動揺してるって丸分かりじゃん…
そそくさとペットボトルを拾い上げ素知らぬ顔で口を付けた。
頭がキンとするほど冷たく感じる。
そんなところからもいつもと違う自分を感じてしまって。
「俺も風呂行ってくるね」
”まーくん…”ってかずの声に吹き出しそうになるのを必死に堪えた。