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秘密の楽園 / Produced by ぴの

第6章 秘密の楽園 5

◆c


弟のこんなおかしな行動、きっと普通の兄貴だったら何考えてんだよってぶん殴るレベル。


なのにそんなのこれっぽっちも思わない。


兄貴としての理性でかずのことを制してきただけで、この現状が受け入れられないなんて全く思ってないんだ。


男同士だからとか、兄弟だからとか。


兄貴としてコイツに何ができるかとか。


そんなの全部抜きにして。


理屈なんか取っ払って。


今、目の前にいるかずに抱く感情は。


俺も…いや。


…俺は、かずのことが好きだ。


好きなんだ、かずが。


そう心の中で繰り返せば、何故だか肩の荷が降りたように楽になって。


と同時に、見下ろすかずの濡れた瞳と火照った頬にズクンと体の奥が反応する。


かずへの気持ちを自覚した途端、その反応すらも当然のことだと腑に落ちた。


だったら…


こうして俺のことを好きだって言ってくれてるかずに。


応えるべきことはひとつ…だよな?


「…まーくん?」


じっと見下ろされているだけで不安になったのか、かずのか細い声が下から届き。


涙の跡が残る頬に手を伸ばして拭うと、反射的にぎゅっと目を瞑る仕草に胸がきゅんと高鳴る。


「かず、ごめん…」

「……え」

「俺も分かったよ…自分の気持ちが」


真っ直ぐに見上げてくる薄茶色の瞳が俺を捉えて。


ぼんやりと月明かりに照らされた真っ白な頬をそっと包み込めば、驚いたようにゆらゆらと揺れて俺を映しだす。


その瞳を見つめながらゆっくりと顔を近付けていき。


俺を好きと何度も言ったその唇に、そっと置くように重ねた。


どくん…


柔らかさはかずからのそれで十分感じてはいたけど。


自分からしたキスではっきりと、そして沸々と湧き上がってくる感覚。


こんなにも愛おしくてしょうがないなんて。


かずが俺にした感情をぶつけてくるようなキスや行動も何もかも。


今の俺には痛いほど分かる。


だってもう…俺だって止められそうにない。


そっと唇を離すとぎゅっと目を瞑っていたかずの瞼がゆっくりと持ち上がり。


そこから見えた潤んだ瞳はまだ俺をしっかりと映しているから。


「かず…好きだよ」


そう言葉にした瞬間、かずへの想いが雪崩のように溢れてきた。

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