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死神森の鴉は夜明けを待つ

第1章 鴉ーしょうねんー

どれくらい眠っていたのだろう。時の概念が存在しないこの世界では、どれくらい眠ってても問題はないのだが。

鴉はゆっくり身体を起こす。

夜より深く昏い髪。その隙間から覗く瞳は紅い。


少年は小窓を開けた。

外には夜光花が咲いていて、仄かに甘い香りに誘われた青蝶が蜜を掬っている。

少し冷たい夜風が心地いい。


部屋の中央にあるテーブルには読み終えた本が山積みにされ、毎日違うお茶を作ったり料理したりして過ごすが、それはひどくつまらないことだった。

話すことも、もう忘れてしまった。


「……言葉なんてなければいいのに」

誰かと通じるもの。

誰かと繋がるための道具なんて。


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