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死神森の鴉は夜明けを待つ

第1章 鴉ーしょうねんー

永い孤独は感覚を麻痺させる。喜怒哀楽。感情と共に、その言葉の意味すらもう曖昧だ。


ここを訪れる者は誰もいない。だから、言葉を交わす必要もない。それなら一層、すべて奪ってくれたらいい。言葉も、思考も。何もかもーー



もう余計なことを考えなくてよくなる。


それで楽になれるのだから。


眠る。けれど夢の中にさえ救いはなくて。

それでも眠りにつく。眠りの淵で夜明けを待つ。いつか読んだ物語ーー美しい夜明けが、そこには描かれていた。


ここに夜明けはない。それでもいつも待ち望んでいた。


小窓の傍にぽつんとあるアンティークの椅子に腰掛け、瞳を閉じる。


……今度起きるのはいつだろうな。


目覚めは不規則で、一度眠ってしまえば、しばらくは起きない。


それでもいいか……誰かの声が、聴こえてくるはずもないから。



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