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僕ら× 2nd.

第5章 別格彼氏 --Thk

***

迷った末に、その服上下でデートにのぞんだ私。
電車の中で、彼氏が話す。

「"大江山 生野の道の 遠ければ"って歌があるだろ?その大江山だよ。そんなことも知らないの?賢い学校行ってたんだろ?酒呑童子(鬼)だよ?」

自分の知識をひけらかす彼氏。
教えてくれるのは別に良いとして、蔑むような口調が大問題。

それに、間違ってるよ?

その和歌の作者:小式部さんの言う"大江山"は、その鬼がいた大江山じゃない。

競技カルタ小中学生の部で、それなりにいいとこいった私を相手に、そんなこと言う?
イタいから指摘はしないであげるわ。

「へぇ、物知りねぇ…百人一首、好きなの?」

「別に。最低限の教養だよ」

…私、これにどう返せばいいのかわからないわ。

「気になるのは、"宇治の川霧"と色恋があったかどうかよね。和泉式部の娘だし、綺麗だったんだろなぁ」

とにかく関連した話題で広げてみた。
小式部内侍に"大江山~"の歌を詠ませた男との関係について。

すると、返ってきた台詞。

「俺の知らない話して、勝ち誇った気分?」

「………」

言い争う気も失せる。

何か違う。
吉坂との意思疎通のしにくさとは、また別格。

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