テキストサイズ

僕ら× 2nd.

第1章 みをつくし --Shu,Tk,R

「え?喋れるの?」

訛りがきつくて現地語もままならないのに?
この遊廓じゃあ、セックスのやり方さえ熟知していたらいいんだもんな。

「喋る、イーディェン(少し)」

「誰に教えてもらったの?」

親切な客がいたのかな?と思った。
それともあっちで指導された?
退出しかけた俺は、再びベッドに腰かける。

「ヨゥヨゥ」

女はピッチャーに入った水をコップに注いでくれた。
受け取った俺は、ほんの少しだけ口に含む。
ここで、お腹を痛めるわけにはいかない。

「それは、誰?」

コップを返すと、女は"要らないの?"という表情をしたあと、くっと飲み干した。
そして、人差し指を壁に向ける。

となり?

同僚ってことか…。
わざわざ値の落ちる海外で娼婦?
ふうん?

「喋れるんだったらさ、キミのこと教えて?俺はリィ。キミの名前は碧衣(ビイ)だったよね?苗字は?」

「名前、ホワィエ」

いや、それは俺の彼女の名前…。

「本当の名前は?グイシン?」

「ホワィエ」

…気に入ったのかな?

「そか。字は書ける?」

「ない」

よなぁ…。
学校なんて行ったことないんだろなぁ。

「家族は?」

「……」

「あー。ま、いいか。キミに言葉を教えた人に会いたいんだ。連れてきてくれる?ウォ シャン ゲン ヨゥヨゥ」

その人物に興味が沸いた俺は、女の胸元に札を差し込んだ。
どんな数奇な人物なのか、もしかしたらこれからの俺に有用かもと…。

だけど女は動かなくて。
俺は隣の部屋を差し、「ヨゥヨゥ」と言いながら身振りで伝えた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ