テキストサイズ

僕ら× 2nd.

第7章 花婿の弟 --Hzm,Ar,R

「ご挨拶が遅くなってすみません。花野さんとお付き合いをさせていただいてます、吉坂侑生と申します。よろしくお願いいたします」

当の花野は、白峯さんと同じようにビンを持ち、どこかの男女と言葉を交わしている。
その行動をじっと見ながら、彼は問う。

「吉坂、侑生君ね…。私は花野の親代わりでもあるんだ。詳しく知りたければ、そうだな。花野の兄から聞いてくれればいい。キミは今、大学生?何してるの?」

「はい、2回生です。大学で工学の研究をしています。生活を快適にする機械などを作りたいと考えています」

「ふむ。では、仕事は工学関係を目指すの?」

仕事…。
俺はTの跡取りで…。
だけど俺の希望は。

「技術関係に就きたいと思っています」

「そうか…。技術職か」

「あの、僕も忙しくて。だけど、花野さんともっと一緒に過ごしたいんです」

門限を延長してくれよ…。
外泊許可は、もっと大人になってからでも仕方ねぇけど。

そんで、この人も花野ちゃんのオムツを替えたのかな。
でも、そんなこと聞けねぇな。

「吉坂君…ね。悪いけど、応援できないな。花野には夢を叶えてほしいからね」

最初は、この人は宮石家を任されているんだから、こう言わざるを得ないだろうな、と思った。

「はい。僕も花野さんの邪魔にはなりたくないと、そう思います。その範囲で…」

積極的な応援は要らない。
せめて、夕食を共にする時間を…と、交渉するつもりだった。
だけど、白峯さんは俺にその言葉を言わせなかった。

「なら、別れてくれ」

優しい笑顔のまま放たれた台詞を、俺が飲み込むのには数秒を要した。

「…えっ?」俺は聞き返し、理由を求めるけれど。

「よろしく」と白峯さんはそのまま歩き去った。
帆澄兄も柊も、俺の結果を唖然と見つめた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ