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僕ら× 2nd.

第8章 小柴の予感 --Ar,Shu,Kn

小柴が去った後、出るのはやっぱりため息。

小柴も本條もわけわかんねぇよ。
俺、高3の時点で父親になってたわけじゃねぇか。

彩華さんに何て説明すれば…。
"俺たちの娘だよ"?
ないだろ、それは…。

俺の胃が痛むその横で、「っ、あっ、あーっ!」と男が叫ぶ。

「っだよ?るせぇな」

その男はスマホを忙しく触りだす。

「花野から電話来てた!も、50分も前だっ」

それなら小柴と喋る前じゃねぇか「マヌケ」。

「ああっ!今夜に限って!…寝る前に俺の声を聞きたかったのかな?」

普段はもう少し優しい俺も、この幸せ野郎を蹴り飛ばしたくなる。

「直接花野から電話なんてっ!それも2回っ!ああっ、俺ったら大切な前日をっっ!なぁ、柊。時間を戻す呪文知らねぇか?」

そんなの知ってたら、俺が使ってるよ。
試験管を渡された、伊織がいたあの時間…いや、もっと前、彩華さんの笑顔があった時間に。

こう騒がしくては、降ってわいた現実と向き合えない。
「ほざいてろ」と言い残し、俺は小柴の事務所に向かおうと思ったんだけど。

「ラインが…あれ?」と、それきり動かなくなったヤツに注目する。

「『明日、相談があるの』だって…」

「え?花野ちゃんが?」

改まって相談なんて、今の俺にはアレしか浮かばず。
俺は手の中の紙袋をアルに向けた。

「要る?」

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