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僕ら× 2nd.

第9章 城 --Khs,Kn,R

アルコールを飛ばしても、包まれるような暖かさが心地よくて。
ずっとこの部屋で過ごしたくなってしまう気分。

世尾さんもリラックスモードで、メロディを口ずさむ。

「ミファソー、ラシドー、シシドレドシドソー…

花野ちゃんと城でワイン飲めるなんてな。今日が俺にとってはクリスマスみたいだ」

そんなこと言うなんて。
世尾さん、彼女さんとはまだ出会ってないのかもしれないな…。

「あの、その曲は"シルバーベルズ"ですか?」

「そう!花野ちゃん、歌える?」

「歌ですか?いえ、えっと…」

歌詞、わかんない…。
帰ったら練習しよう…。

「バイオリンならあるんだけど?」

「世尾さん、無茶振りですね。…弾いてみますけど、はずしても笑わないでくださいね?」

「もちろん」

「じゃ、練習を…」

「ん。待ってる」

そう言って、ソファに深く身を入れた彼は目をつぶった。

音の調整を終えて、私は彼に声をかける。

「世尾さん、世尾さん?」

もしかして、寝てる?
どうしよう?
あ、動いた…。

「…ん、ん。あ…悪い、寝てた。昨日、遅くまで映画を見ててね」

「すみません、起こして。あの、寝起きだけど聴いてくださいね?」

この曲のソロならピアノのほうがあうのかも。
私のバイオリンは、どうも習いたてみたいで。
っ!音、はずしちゃった。
邪念は捨てなきゃ…。

とても聴かせられるレベルでない。
ホームパーティの前座の前座のそのまた前座の暇潰しのような私の音だけど、拍手してくれる彼。

「ああ、和んですっごくいいね。遠い昔を思い出すよ。それに生演奏なんて、贅沢だなぁ。お願い、もっかい聴かせて?」

アンコール、きちゃったよ…。

「はい。喜んで」

弾きおわりの頃には、もう彼はくーくーと可愛い寝顔。
私のバイオリンで眠れるなんて、よっぽどお疲れなのね。
膝掛けを彼に掛けて、私もむかいのソファに座る。

赤々と燃える暖炉の火を見ていると、とっても優しい気持ちになる。

ハッピークリスマス。

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