テキストサイズ

僕ら× 2nd.

第9章 城 --Khs,Kn,R

まくれた衣服を元通りにして、俺にくれた膝掛けをキミの膝にかけ直す。

深呼吸を何度もしながら、これが尋常なんだと膝をつく。

穏やかな自分の声が聞こえてくる。

伊織、ごらん?この空間を。
お前の描いた幸せだろう?

こんな近くに彼女がいる。
魔法がかかったみたいな時間。

お前の大切な彼女じゃないか。

寒くはないかな?
すきま風は防げてる?
心地良さそうな寝顔に安心する。

足元に胡座で座り込み、滲む目で本を開く。
だけど集中する気もなくて、再び柔らかな顔を覗く。

果たせなかった試みに、眉間にシワを寄せて目をつぶると、また涙がこぼれる。

相変わらず無防備なんだから。
俺は、まだまだキミから目が離せない。

この空間を切り取って、永遠の書架に移したい。
今日の始めに、セーニョ(目印)を深く書き込んで。
今夜には、ダル セーニョ センツァ フィーネ(終わらずに目印まで戻る)。

俺の心、ずっとキミとの時を繰り返したいんだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ