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僕ら× 2nd.

第9章 城 --Khs,Kn,R

***

孝明を帰らせた後は、合流した森さんとキミを宿へ送り届け、彼女がいなくなったあの城の一室に戻る。
少し前まで彼女と過ごした部屋。
チーズとワインの間に紛れて、彼女の香りが漂ってるはず。

この空気に色をつけて、いつでも彼女を感じられるといいのに。
甲子園の砂のように、目に見えればいいのに。
手を伸ばしても、それはつかんだ感触もなくて。

だけど紛れもなくこれは、キミが居た空気。

俺は小瓶に閉じ込めた。
キュッと蓋をしっかりと締め、眺めてはみるけれど、信じなければわからない不確かな透明。

自宅では孝明がカンバスを睨んでた。

「デート、おつかれさん」と言うと、デートじゃないし、とむくれる。

ああ、知ってるよ。
お前、ヨゥを預けた千春さんに惚れてんだもんな。

ペンフレンドの件は、小柴さんに頼まれたんだろ?
だけど、楽しそうだったじゃないか。

「リィ兄。今日、あのコに会ったよ?写真のコ。生きてるじゃない。しかも更に可愛くなってるし!」

「生きてるよ、当たり前。高3だって教えたろ?」

それに、彼女は俺が死なせない…なんて、こんな遠くにいて断言できないよな。

「次男の彼女なのに?」

「次男の元カノで、長男の今カノだよ」

「えっ……。あ、それで護衛を任されてるのか」

うん、違うけど。
そういうことにしておこうか。

部屋の隅に座った俺は、あの小瓶にくったりとした革紐をくくりつけ、首にかけてみた。
その様子をいぶかしげに孝明が見る。

「何それ?毒ガスとかじゃないよね?」

「ふふ。開けたら覚悟しなよ?」

俺の大切な彼女の気配なんだから…。

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