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僕ら× 2nd.

第9章 城 --Khs,Kn,R

その時、ふと手前のガラスケースに映った人影に、俺はぱっと後ろを見る。

今、棚の向こうを花野ちゃんが通ったかも。
だけどもう、その姿はなく。
本当に彼女だったら、一緒の森みが騒がしいから、こんな近くを通ったならすぐに気づくよな。

いやもう俺、意識しすぎだっての…。

うつむいて、ため息をつく俺に祐一朗が更に話す。

「それはね、晄ちゃんが血の詰まったただの袋じゃないからだよ」

「え?」

俺、声に出してたのか?

「その感性を持ってしての晄ちゃんなんだから。俺はそれでいいと思うし、気が向いたら話を聞くよ?」

「じゃ、夕食の席、かわって」

「それはいや」

「何でだよ?俺の話、聞くんだろ?」

「聞いただろ?聞き入れるかは別として」

ああ。こんな理屈をこねるヤツ、前にもいた気がするよ…。

そして顔を上げると、表情を歪めた俺がガラスに映る。
その耳に知った声が入ってきた。

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