テキストサイズ

僕ら× 2nd.

第9章 城 --Khs,Kn,R

「ねぇ、小柴さん。香水とか使う?おそろいで買わない?」

「う、ん。香水かぁ…」

振り返ると今度こそ間違いじゃなく、そこには森みがいた。

森みの横には見知らぬ男。
で、彼女は?

「遠くにいても、香りを嗅げるって嬉しいなって思って」

森みにそう促された男は、あきらかに迷惑そうだけど…。
そいつがガイドなのか?

「おい、森み。花野ちゃんは?」

現在、口説き中かもしれないけど、これは尋ねておかなきゃ。
俺に気付いた森みは、皮をかぶった素振りで答える。

「あ、依田君、来てたの。花野ちゃんはね、ガイドさんとデートなの。もともとの知り合いなんだって」

「え?何それ。ガイドってどんなヤツ?」

「ん、すらっとしてまあまあカッコいい感じかな。あのふたり、結構お似合いだったよね?あ、小柴さん。この2人は私のクラスメイトなの。で、こちらは私の彼氏なの」

「いや、違っ…」

慌てて否定しているその男に、祐一朗は「くくっ」と笑ったけど、俺はそんな余裕なんかなくて。
矢継ぎ早に質問を繰り出す。

「ガイドとふたりっきりでどこにいるんだよ?お前は何で男とふたりなんだよ?この人、同じ学校じゃないだろ?」

「何焦ってるの?依田君より安全よ。じゃあ、もう帰る時間だし、バイバイ~」

手を振りながら、森みはその男と通りの方へ進んで行った。

「俺たちも集合時間だ、行こ。花野さんは大丈夫だって。心配なら帰ってから本人に聞いてみようよ」

この見知らぬ土地で彼女ひとりを探し回るよりも、それが得策なのはわかる。
カバンからスマホを取り出してはみるけど、俺は海外用手続きなんてしていなくって。

「学校と契約している正規ガイドだよ?連絡先も把握してるから気にすることないよ。だけど今は、ふたりきりだって先生に言わないほうがいいよ?森さんが罰せられる」

冷静に諭すように言われて俺は、前髪をかきむしりながらも従った。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ