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僕ら× 2nd.

第10章 …---… --Shu,Ar

室内に入ってきたのは、わさっと豪華な花束を持った親父さん。
その花束をアルに渡そうとするけれど、アルはぷいっと受け取らない。
替わりに大輔が、出入口付近の手洗い場に水を入れ始めて、束のままを突っ込んだ。

それを横目にアルは言った。

「俺、トイレに行ってくるからな」

てことは、アルにも着信があったな。
送信者もまだ確認できていないけど、アルと俺に同時に発信?
てことは、ブレーン関係のヤツら?
大抵のことは俺にだけ来るんだけど、この時間に何だろう?
まぁ、アルには空港に着いた彼女からのラブメールで、俺にはイチからの苦情なんてのもありそうだけど。

「あとにしろよ。俺の用事は3分もないから」と親父が制する。

3分もない?
アルがしでかしてないか確認に来たんじゃないのか?
どうでもいい要件なら、見張りの誰かに言づければいいものを…。

そんな俺と同じ心境か、アルが鬱陶しそうに尋ねる。

「何で、親父が来るんだよ?加害者本條は?」

本條に来られても困るけどな。

「懺悔中」

「けっ。もちっとマシな言い訳、考えたらどうなんだ」

そりゃそうだけど、親父さんにまともな言い訳を期待する方が間違いだ。

懺悔ってったって、俺に怪我をさせたことを悔いてるんじゃない。
『蝶のように舞い、蜂のように刺す』
本條が悔やむんならさ、そんな理想的な所作ができなくてってとこだよ。

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