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僕ら× 2nd.

第10章 …---… --Shu,Ar

そんな親父は、手洗い場の蛇口をひねる大輔に指示を出す。

「その花、彩華さんとこにも分けてやって。柊、今日明日はアルとここにいろよ?変わったことがあったら、連絡してやるから」

その言葉を受けて、アルが言う。

「俺と柊はこれから学校に行くんだよ。今日、別れるから。親父、ついてくるなら、別便にしろよ?で、もう時間ねぇんだ。トイレ行って朝飯食う時間くれ」

そう言って、親父さんの脇から手を伸ばしたけれど、アルのその手はドアノブに届かないうちに止まる。

「3分。これが俺の用事」

と、ベッドからの俺も、微笑の親父さんがポケットから出した手元に目を疑う。

「それ…」

凝視のアルの指先が向かってくると、親父さんはピンっとアルの胸元に弾き飛ばした。

その小さな輪は、跳ね返って床に転がり。
かすかに金属音を響かせてクルクルクルっと連続して弧を描く。

瞬時ひざまずいたアルの手の中に、それはすぐに納まり、だけど。
やや小ぶりで、アルの左薬指と同じ光。

俺と大輔は息を飲み、アルはぐっとそのリングを握った。

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