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僕ら× 2nd.

第10章 …---… --Shu,Ar

「何で、お前がこれを持ってるんだよ?」

立ち上がったアルは、親父さんの胸ぐらをつかんで、ぐぐっと襟をしめる。
壁にガツッと押し当てられた親父は、アルを…何だろう?
じっと睨みつけてはいるけれど、その目に怒りは混じってないように俺には見えた。

「お前、今まで何をしていた?花野に会ったのか?」

「アル兄、乱暴はいけない!彩華さんに花を届けなきゃ」

すぐに大輔が仲介に入って、アルの力が弱まる気配を感じる。

「大輔、離せ!大丈夫、殺しはしない。本当のことを聞くだけだ…」

「だったら手をおろしてよ。これじゃ喋れない」

親父さんの顏がアルと大輔で隠れた、その隙に俺はスマホを確認する。
まずは現状把握をしておきたくて。

先ほどの連絡、送信者はイチ。
彼女は体調不良のため学校へは寄らずに、空港から直接自宅へ教師:笹木により送られる道中。
そのクルマにはイチも付き添っている、とあった。

体調不良?飛行機によるものか?
前に和波さん運転の機では、言うほどには崩してはなかったけど、今回は旅行終盤の長時間移動だからか?

まあ、イチがついているなら、彼女は安全圏内と考えていい。

それにしても親父さん、アルの殺気に抵抗もせずに任せたな。
あの表情、何を考えているんだろう?

余裕、ってことか?

親父の身にもしもがあっても、本條がいるから。
その時は、本條が生命を取るだろう…花野ちゃんと彩華さんのどちらかの。
そして残った方は、歯止めに使われる。

俺と大輔が、もしもを阻止するのが見えてるからなのか?

それともアルに同情?
自分で追い詰めておいて。

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