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僕ら× 2nd.

第12章 IF --Khs,Ar,Shu,R

~吉坂侑生side~

………

……「花野は俺が守るからね」

頭に響いてきたその声に気付いて、顔を上げると。

お前…生きて?

「アル兄、元気で・・」

伊織が俺に手を振る、穏やかな笑顔で。
その場所は徐々に遠ざかって。

おい、待ってくれよ。
ちゃんと顔を見せてくれよ。

ヤツの方に進もうにも、俺の両脚は重く動かず。
出した声も吸い込まれるように、耳に聞こえない。

なぜ?息はしているのに、周囲には空気がないような感覚…。

ふと、目を向けると、俺の胸から下はなく。
というか、出現真っ只中で、ジジジと1ピクセルづつ現れていく。

なんだ、これ?
俺、只今読み込まれ中?

早く、脚を復元してくれよ。
伊織が行っちまう。

俺が焦るうちに、その奥から花野が現れて。

「伊織君っ!」と嬉しそうに駆け寄ろうとすると同時に。

彼女の正面遠方からわき出るように現れた影が、ゆらりと傾いた。
その影は、花野目掛けて振りかぶり。

「花野っっっ!!」

響き渡ったそれは、俺のだか伊織のだかの絶叫で。

やっとで腕が現れた俺は、必死に伸ばし。
そのシーンをスローモーションのように見据えた。

影が放った先が花野に行き着く前に、伊織が飛び込んできて。
花野を抱き締めて、その直後。

伊織の背中に柄のない長剣が深く突き刺さり。
そして、花野をも鋭利に貫いた。

彼女の背中から突き出た先には、赤い雫がしたたり。

なのに、ふたりの口元には、笑みがあり。

見つめ合ったふたりの口が動く…「……る」。。

なっ?

言葉にも息にも詰まった俺の前で、その映像はバラバラと崩れ、気づくと灰黒色の煙にまみれて。
ジジジとわずかに聞こえていた音は消え、俺の全身がロードされていた。

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