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僕ら× 2nd.

第12章 IF --Khs,Ar,Shu,R

***

その日は重そうな雲が空一面を支配していて、それでも穏やかな1日だった。
もしかしたら、俺の知らない間に小雨くらいは降ったかもしれないけど。
とにかく、そんな平和な冬の晩だった。
俺がリースに会ったのは。

「盗聴してたことをごまかせって?」

「はい。ご迷惑でしかないでしょうけれど、無理を承知でお願いいたします。
是が非でも、柊兄たちと交信していたことにしていただきたいのです」

そこは、地下通路を歩いた末のナイトクラブ。
招かれたというからには、ここはブレーンの管轄施設なんだろな。

その一室でソファーにもかけず、ヤツは深く頭を下げる。

「小柴の指示で俺らを張っていたのか?」

「いいえ。柊兄やアル兄ではありません。
本部の…親父たちの動きを見守っていました。時々、突拍子もない事態を自ら招きながら、ブレーンならそれも把握していて当然と無茶振りされるので」

これまではノドはついてるのか?ってくらいに口を開くことのなかったリースが、こんなに舌を回すなんて。
ナマリなく、歌うようにスラスラと喋るリースに目を見張り、ことの次第を聞いた俺は、どうすべきかを考える。

自ら名乗り出るあたり、やましいことはないんじゃねぇか?
はたまた、逃げられないとふんでの命乞い?

いやいや、この男がどこかしらのスパイだったなら、元締めにかくまってもらえばいいだけのこと。
ひとりでここを訪れた俺を、取り囲んで脅す気もなさそうだし。

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