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僕ら× 2nd.

第2章 それぞれの秘密 --Ar,Hzm,Khs

とっさにつかんで来てしまったけど、これ、どうしよう。
乾いてるようだから、もう干さなくていいだろうけど。
自室に戻った俺は、下着を見つめて佇んだ。

今更返しに戻って見つかっては、言い訳のしようもない。
俺はひとしきり眺めて紙に包み、クローゼットの奥にしまった。

隣の部屋では、まさに…。

そう思うと、居ても立ってもいられない俺は、リビングに足を運ぶ。

そこでは、仕事を終えた兄貴(宮石和波)がくつろいでいた。
付箋の突き出たパンフの束を脇に置いて、読んでいるのは神々が登場する北欧の物語。

サガ?
歌劇バージョンしか俺は知らないけど、あれって救いはあったっけ?

ジークムントとジークリンデの子どもがジークフリートなんだよな。
親であるふたりは、兄妹なんだよな…。

魔法に予言、小人に竜…伝説なんて何でもありで。
そこが面白いんだろうな。

俺も物語の中に生きたいよ、って片隅で思う。
脚本はもちろん俺で…。
と、口の端を悲しませながら兄貴の隣に進む。

「兄貴、おかえり。…ハニィの彼氏ってさ…」

告げ口をするつもりもなかった。
今まで敬遠していたけれど、どんな男なのか詳しく知りたくなって。
そこまでの仲なのなら、俺は知っておかなきゃならないと思って。

「あ、今夜来てたか?」

ソファから身体を起こした兄貴は、驚くでもなくニコッと笑う。

え?
知ってるのか?

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