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僕ら× 2nd.

第13章 ソーウ" キ プ 1 --Ar,Shu

しばらくは黙って聞いていた女だけど、質問を投げかけてくる。
俺の考えを読まれたくないから、"了解"とだけ言ってくれればいいのに。

「先ほどまで、あんなにここから出たいとおっしゃってましたのに。それに、お食事やお布団はどうなさるつもり?」

「気が変わったんだ。どっしりしろってお前も言ってたろ?だから、食事もベッドも俺は要らねぇんだ。
それで悪いんだけど、風呂に入るのは今のうちか、家に帰ってからにしてくんね?」

俺が過去に言った言葉はすべて忘れて、いや、俺の存在そのものをすっかり忘れてほしいんだけどな。
もう尋ねてくれるなと念じながら、俺はそわそわと浮きたつ気持ちを必死にしずめた。

そんな俺を女は、じっと見たかと思うと、仰々しく拍手をしながら言った。

「まあ、ご立派ですわ。宗樹様もよく俗世間から身を切り離して滝行されてたと伺ってます」

え?滝行?

「私のお風呂はご心配無用ですわ。大丈夫、あなたの邪魔はいっさいいたしません」

あの親父がまさか、シャワーに打たれて修行してたのか?
どこで話がこじれたのか、とにかくこれは好都合。
俺は風呂場で修行することにして、女に頼む。

「ああ。集中したいから、何があってもノックなんかしないでくれ」

「わかりましたわ。その落ちつきのなさが少しでも改善することを祈っています」

"余計なお世話だ"と言いそうなところ、深くうなずいた俺は足早に浴室へと直行した。

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