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僕ら× 2nd.

第13章 ソーウ" キ プ 1 --Ar,Shu

「まいったな。お前が本当に知らないとは。となると危ないな。あいつ、自分では呼吸できねぇんだろ?」

「まさか、呼吸器を…置いてったのか……!?」

ヤツが俺の手を払いのける前に、俺は手を放した。
というか、手から力が抜けた。

点滴ならまだしも、自発呼吸の怪しい彼女に、呼吸器なしでどう過ごせってんだ?
危ないどころじゃねぇだろ?

『酸素供給停止から3~5分で、脳は不可逆的損傷を受けてしまいます……』

この前の医大イベントであとから入手した動画、花野ちゃんたちの救命講座でのセリフが浮かぶ。
何度もアルが再生させてたんで、もう覚えちまっていた。

彩華さんが呼吸器を外されてから、もう12時間以上が過ぎている。
それは何を意味するかというと……。

たいした運動もしていないのに、自分の鼓動がやけに耳に響く。
正面以外は、存在もしていないかのように暗くなった。

もう俺は、錯乱に近い状態だったと思う。
何かを叫んでいた気もするが、よくわかんねぇ。
ドアを必死になって開けようとして、体当たりしたり蹴りを入れたり。
それでも開かないと知ると、部屋の椅子をつかんで振りあげ……。

そこで、本條に腕をつかまれて、引っ張られたかと思うと、なぎ倒された。

無機質な天井が視界に入り、両目尻から流れる熱い液体を感じた。

「彩華さ…ん……」

俺は、やっぱりあなたを守れないのか。

これが絶望ってもんなのかな。
探しだしたところで、本條を責めたところで、もう彼女は。

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