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僕ら× 2nd.

第13章 ソーウ" キ プ 1 --Ar,Shu

そのまま廊下に進むかのように見えた本條だけど、ドアを閉めて振りかえる。
そして、自分のジャケットの内ポケットに手を入れた。

ヤツのふしくれだった指のあいだから、ジャラッと見えたのは、蓋つき懐中時計。

しばらく本條は自分のてのひらを眺めていたけれど、次の瞬間、俺の手に押しつけて、

「持っとけ。なんなら、修理してもいいぞ」

そう言うと、さっと部屋から出ていった。

「…くれるなら、直してからにしろよなぁ?」

同意を求めるように、俺は背後の辰巳に振り返ったけれど、ヤツは閉まったドアに最敬礼したまま、しばらく動かなかった。見習うべき忠誠心か。

まあ、ここにいても仕方ない。
本條の言葉に従うのもシャクだけど、ここは諦めずにアルを拾って、ヘリに乗るか。

渡された時計をポケットに突っこみ、アルの居場所を尋ねようとしたところ、辰巳が先に口を開いた。

「さ、風呂に行くぞ」

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