テキストサイズ

僕ら× 2nd.

第2章 それぞれの秘密 --Ar,Hzm,Khs

***

5月の晴天、洗濯日和。
ゴールデンウィークの殆どを事務所で過ごした俺は、久しぶりの休日に隣の個室をノックする。

だけど、返事がない。
ピアノもきこえないし、今日も彼氏とデートなのかな…。

こんないい日に惰眠をむさぼるのはもったいなくて、俺も出掛けようと玄関へ向かって歩いていたその時。
ガシャンっと派手な物音が廊下に響いた。

ん?
誰か何かを落としたのか?

その音は、先程通り過ぎたキッチンから。
コック夫妻が使うのは、階下の広い厨房だし。
また、マコちゃんとコスメ作りでもしてるのかな?
話し声は聞こえないけど。

気になって覗くと、妹が1人でグツグツとした鍋の中をかき混ぜていた。
落としたのは、鍋蓋だったか。

とにかく今日1日は、家にいるんだな?
気分が上がった俺は、コンロの方に向かって歩く。

「何、作ってるの?」

さっき朝食を食べたばっかりなのに。

「あ、お兄ちゃん。これは、作ってるというか…」

妹は「見つかっちゃった」と、困ったように笑う。
気になった俺は、台の上の袋を覗く。
それは、掃除用の。

「重曹?」

「うん。…お粥を作ろうと思ったら、焦がしちゃって」

鍋の中は、白っぽい泡で煮えたぎってる。
これで、焦げが取れるのか?

「お粥?具合でも悪い?」

顔の色艶は良さそうだよな。
心配になって顔を覗くと、首を横に振った。

「ううん。お料理の練習」

「だけど、失敗」と首を可愛く傾けて笑う。

それって、花嫁修業ってことか?
お前、まだまだ家にいるだろ?

高校卒業して大学6年通って、研修で2年して…最低でもあと9年…。
それでも一人前とはいえないんだろ?
まだまだ先だろ?

もし彼氏と結婚の約束をしたとしても、そんな未来のこと、わかんないだろ?
別れてるかもしれないだろ?

ストーリーメニュー

TOPTOPへ