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僕ら× 2nd.

第2章 それぞれの秘密 --Ar,Hzm,Khs

鍋からブクブクと泡が弾けると、白い粉が飛ぶ。
黒いコンロの周りは、もう白い粒々の結晶だらけで。

掃除というか、どんどん汚してるよな…。

「なぁ、それってずっと煮え立たせなきゃならないの?」

湯気がもうもうと上がって、何かの実験のようにも見えてきた。

「えっ?…うん、その方がきれいになるかなぁって思って。もう少し重曹足した方がいいのかな?」

足すなら、蒸発しまくってる水分じゃないのか?
って俺が考えている間に妹は、パックに手を伸ばす。
と、「っっ!」と手を引く。

パックの端で引っ掻けたか?

「どした?…手、火傷してるじゃないか!そんなのあとでいいからっ!早く水に浸けろっ!」

赤く腫れた右手を取り上げ、流水に晒す。
ボウルに数個氷を入れて、手を浸けさせた。

「冷たぁ」

「我慢しろ。もうっ!ここ、水ぶくれになってるぞっ?」

広範囲ではないけれど、その手のひらは、白くぷにっとした膜を形成していた。
火傷したのいつだよ?

「あれ?いつの間に。Ⅱ度熱傷っていうんだって」

妹は楽しそうに、水中のその手を見つめる。

「バカっ!火傷したって思ったら、すぐに水で冷やせよっ!ヒリヒリしてるだろ?ヒキツレとか痕が残ったらどうするんだよ?ピアノ弾けなくなんだぞ?」

「はい。ごめんなさい」

しゅんとする妹。
そうなると俺の感情は逆転して、妹の頭を撫でる。
我ながら、甘い、とは思う。

「ごめん、…怒りすぎた。困ったらすぐ俺を呼べよ?一緒にしてやるから」

「うん、ありがとう。お兄ちゃん」

火傷までして…彼氏のためにってのが気に入らないよな。

俺は鍋の火を止めて、リビングのソファに妹をいざなった。

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