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僕ら× 2nd.

第3章 俺色 --Ar,Kn

そう…俺は味わいてぇんだ。
もうきっと、漏れてしみだしてる、この…。

午前中のふたりの情事が残した匂いと、花野から立ち上るような色のついた空気。
フェロモンってやつなんだろか。

「そんなの嫌だよ。臭くて汚いんだから」

「んなわけねぇよ。花野は俺の大好きな匂い。汚いなんてない」

彼女の髪を離し、耳元に顔を近づける。

「お願い、今は…ぁ」

そこから首筋にかけて唇を吸い付かせ、舌でなぞっていく。

「っ、…っ」

彼女は口を結んで俺に抗った。

ふふっ、可愛い。
本気で嫌なら、もっと抵抗できるだろうに。

身体は俺に応じてくれてんだろ?
隠したってわかるよ。

「花野の匂いに俺は引き寄せられんだ。甘くてクセになる匂いだよ。今、シャワーで流したりなんかしたら絶対にダメ」

彼女を壁に押し付けたまま、ためらうシーツを剥がしていく。
特別柔らかなふたつの膨らみに顔をうずめて、脇から手のひらで包んだ。

胸元から腋、首、耳に鼻をつけながら確認していくけど、この温度と湿度とでもいうような香りは掴もうとするとたちまち消えていく。

「変な臭いなんてしねぇよ?」

彼女の瞳を覗きながら、俺は言う。

「もしかして、俺が汗臭い?」

夏の締め切った空手部の部室のような臭いでもしてんのか?
あれは正直、男の俺でも顔を背けたくなる時があるけど。

だけど、剣道の防具も大概……だよな。
伊織は何か、でっかいタライに漬け込んでたけど。

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