テキストサイズ

僕ら× 2nd.

第4章 ライムライト --R

幼稚園の秋の発表会、各クラスが思い思いに演劇や演奏を披露するんだけど。

俺と彼女のいるソラ組は、『長靴をはいた猫』をすることになって。
記憶力を買われた俺は、猫を演じることになり。

抜擢された時は嬉しかった。
だって、主役だもん?

猫の飼い主:カラバ侯爵(le marquis de Carabas)とお姫様の役を、PTA会長と副会長の子どもがすることになり、彼女は、というと。

"この土地はカラバ侯爵様のものです"と喋る"農民A"の、妻……。

「ねぇ、ルイ。僕と役を替わらない?」

持っていたヒーローのカードを農民Aに見せながら、そんな交渉をした。
そして、先生にとがめられた。

「伊織君、引き受けた仕事は投げ出さずにやり遂げなさい。カードで気を引くなんてズルいわよ?」

俺は猫が嫌だったわけじゃない。
演じる自信がなかったわけでもない。
台詞なんてナレーションから全て覚えてしまっていた。

彼女の夫役を自分じゃない誰かがやるのが、嫌だったんだ。

わがままなんだけど、自分の行為をズルいと言われたのは、まあ、その通りだとしてもショックだったな…。
俺としては、等価交換だったわけだし。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ