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僕ら× 2nd.

第5章 別格彼氏 --Thk

そして私に完全に背を向ける。
棚にあったチューナーやメトロノームを取り、また元に置く。

「私は女に誠実なあんたに聞いてるのよ」

「柊だって誠実だよ」

振り返らないままヤツは言う。

何をしたいのかと観察していたら、石膏でできたベートーヴェンの胸像に気づき、それの持ち上げたり下ろしたりを繰り返し始めた。
またもや、筋トレやりだしたよ…。

仕方なく私は、ヤツの顔が見える位置まで移動する。

「あんなに遊んでるのに?あいつに乱行パーティーに誘われたこと、私は忘れてないのよ?」

本気だったかはわからないけど、私が乗れば断らない感じやったし。

「柊は誠実に乱パに参加してるんだ」

そんな、偉大なる音楽家を抱えながら堂々と言われても。
確かに、今のあんたの表情と似てるけど。

「誠実と乱パって、対極でしょーが!」

どこをどう取っても、声を大にして対極よ!

私の訴えも右から左の様子の吉坂は、ぶんぶんと腕を回す。
その石膏像、割ったら万札飛ぶんだからね?

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