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地下アイドルの休日

第3章 夏休みはキャンプに行こう

あやのんも沖縄に行くと決まると、ちはるんは車の中上機嫌でスマホを操作して新幹線や飛行機、ホテルの手配をする。

普段はスマホやパソコンの操作は苦手で悪戦苦闘しているのにこういうことになると実に巧みにスマホを操作してテキパキと予約をしていくちはるんを見てあやのんは感心しつつ、普段からこの能力を発揮すればいいのにと少し残念に思っていた。

ちはるんとあやのんが沖縄に行くと話しているので女社長はホッとして地酒巡りツアーに申し込もうとしているが、どうも上手くいかない。

「くそっ、おかしいな」と思わず声に出てしまう。

いっそ直接電話しちゃおうかとも思ったが、ネットで予約した方が安いし特典もつくし、そもそも地酒巡りツアーに行くことがみんなにバレてしまうからそうもいかない。

「姉さんもどっか行くんですか?それともネットショッピングか何かですか?」

と自分たちの予約をスマートにこなしたちはるんが上機嫌で訊いてくるので、何でもないと誤魔化そうとしたが旅行の画面を消す前にケイタイを覗かれてしまった。

「この地酒巡りツアーに行きたいんですか?」

とちはるんに言われて思わず

「あんたたちが沖縄に行くって言うから旅行のサイトを見ていたらこんなのがあって、面白そうだなと思ったんだけど申込みも面倒だからまたにしようかな」

と言ってしまった。

「そんなこと言わないで行きたいと思ったなら行った方がいいですよ」

とアニメかドラマの主人公のようなことを言ってちはるんが予約の操作を買って出る。

「これだったか」とあやのんは思っていた。

夏休みを決めた時からいやに上機嫌だったんで怪しいとは思っていたが、こっそり地酒巡りツアーになんて行こうとしていて、今サイトを見たらたまたま見つけたなんて真っ赤な嘘だとあやのんにはお見通しだった。

「地酒美味しそうですね、お土産楽しみにしています」とあやのんが言うと、

「わ~い、お土産いただけるんですか。そんな気を使っていただかなくてもいいのに」とちはるんは無邪気に喜ぶ。

そう、ふたりとも大の日本酒好きなんだ。だから知られたくなかったのに、これでお土産を買ってこないワケにはいかなくなった。

「アハハハ」と少しやけっぱちな女社長の盛大な笑い声が車内に響いていた。

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