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地下アイドルの休日

第4章 東北珍道中

今年の東北ツアーは何事もなく無事に終了した。
帰りの車ではちはるんとあやのんは沖縄行きのことを考えてルンルンしているし、女社長も地酒巡りツアーのことを考えてウキウキしている。

行きも帰りも白バイが突然飛び出したりするとドキリとしたが、前の車だったり隣の車だったりするとホッとする反面、大した違反じゃないのに鴨られちゃった犠牲者が可哀相にもなる。

メチャメチャぶっ飛ばしてもはや危険運転レベルのヤツが平気でぶっ翔んで行って、ちょっとスピード出ちゃったかなぁとか、ちょっと追越車線の走行時間が長かったかなぁぐらいの人が鴨られるのは実に理不尽なことだと思う。

ちはるんがオワローズのファンだということをカミングアウトしてあやのんも引きずられるようにオワローズを応援するようになり、女社長にまでもオワローズを応援するようになって、オワローズの応援がフルーティの公式行事のようになったのもすべては東北珍道中から始まったと東北遠征をする度に思い出してしまう。

あれは三年前・・。

東北でのステージは4日間と長丁場だし、みんなが楽しみにしているので、長時間充電がもって音も数段いい、いつもより高性能の音響その他の器材を用意する。

音響や楽器は東京の入口の街にある業者の事務所まで取りに行く。そのために夜中に出発して業者の事務所に行く。

その事務所がまた妖しげなネオンが光る大人のホテルがある界隈にあるのがまたなんともはや・・。

女社長はここへ来ると必ず機嫌が悪くなる。眉をピクピクさせて頭痛でもしているように額に手を当てている。

そんな不機嫌そうな女社長には誰も話しかけないようにそっとしておくことにしているのだが、あやのんは密かにこういうホテルに行ったりするようなことはかなりご無沙汰なのかなと思ったりしていた。

いや、もしかするともう40を越えるのにまだそういうことをしたことがないのかとも思ってしまう。もうすぐフルーティとして活動するようになって12年くらいになるが、女社長に恋人がいるなんて聞いたこともないし、男の影も感じたことがない。

「うわぁ、見て~、キレイなホテル~♪あのホテルの中では・・うひひひ」

不機嫌そうな女社長にはお構いもなくちはるんが騒ぎだした。

去年までは何の関心も示さなかったが20歳になって急に色気付いたみたいだ。色気付く年頃としては遅咲きであるが・・。

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