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地下アイドルの休日

第4章 東北珍道中

どうやら業者は機材をここに運んでいるのだが、大渋滞に遭って遅れているらしい。

「誰が電話に出てるの?捕まったりしてこれ以上遅れるのはゴメンだからね」

運転手が話してるんじゃないことを確認して少し安心したが、女社長は車を降りて話を続ける。

地面をバタバタと踏みつけたり、せわしなく歩き回って話すのがイライラしながら電話で話す時の女社長のくせだ。

足早に車から見えなくなるような所まで歩いて行ってしまったことからもイライラがピークに達しているのが分かる。

しばらくすると、あんなに怒っていたのにどうした?というぐらいにしょぼくれて泣きそうな情けない顔をして女社長が戻ってきた。
両手を挙げてホールドアップしていて、目付きの鋭い2人の男と1人の女の3人組に囲まれている。

「あっちゃ~、社長~」

女社長の情けない姿を見た運転手も情けない声を上げてがっくりとうなだれた。

そう、女社長は職務質問に遭ったのだ。

車に近づいてくるに連れて警官たちの表情が厳しくなってくる。

ここはラブホテル街。人気のない怪しげな建物に停まっている車。運転手はお世辞にも人相がいいとは言えない。中には若い女のコが2人。芸能会社社長だから当たり前だが、やたら業界人っぽい中年の女が金切声でケイタイで話していた。警官たちからすれば怪しいことこのうえない集団であろう。

「あなたたちはどういうご関係ですか?」
と目付きの鋭い警官が質問をする。明らかに疑っているぞといった態度に一同は強張るが・・

「家族だよ」とちはるんがあっけらかんと言った。

なるほどそういう逃げ方もあるのかとあやのんは感心する。

「とすると、お母さん、お父さん、そして姉妹?」と警官は手帳に記入しながら女社長、運転手、あやのんとちはるんを順番に指差した。

「ち、ちょっと失礼ね。誰がお母さんよ、一番上の姉です」

と女社長は声を大にして抗議する。この場でそんなことにこだわるかとあやのんは少し呆れ顔をする。

「お姉さんは無理がありすぎますね。本当はあなたが社長なんじゃないですか?」

と警官は的確な指摘をする。社長と見抜いたのはさすがだと思うが、お姉さんは無理がありすぎるという点にこだわって失礼だと女社長は猛抗議する。

「そうですよ、失礼ですよ、何歳になっても女性は女性なんですから」


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