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地下アイドルの休日

第4章 東北珍道中

女性警官が自分も少し失礼な発言をしながら女社長に味方する。が、にこやかだった顔が急に厳しくなって女社長に目を合わせる。

「ご自分だって女性なのに若い女の子をこんなところで働かせるんですか?」

女性警官の厳しい発言に女社長はあんぐりと口を開けるが、すぐに喰ってかかる。

「こんなとことは失礼ね。そりゃあ、テレビに出たりするほどメジャーじゃないかも知れないけど、けっこう人気あるんですからね」

女社長の発言に首をかしげながら警官たちは車の中を見回す。

女社長がこのふたりがフルーティというアイドルで、これから東北のイベントに行くのに機材が遅れているという今の状況を説明するが多分聞く耳は持っていない。

車の後ろの荷台にはステージ衣裳とカメラ機材がある。

「ほう、あれが衣裳であのカメラで撮影するんですね」

と警官が言うのでみんなは頷いた。

「何本ぐらい撮影したのですか?」

と警官が質問するので、

「撮影は毎回してるけど、商品になったのはまだ2本ぐらいよ」

と女社長が答える。
そう、ステージを見直して反省したりよかったところを見つけたりするために毎回動画撮影はしているが、映像作品として販売しているのはこの時点ではまだ2作品だった。

「う~む、2作品。まさか映像審査も通っていない地下作品じゃないですよね?」

「それに2作品だけで会社が成り立つわけがない。今日はどれぐらい客を取った?」

男性警官2人が段々と語気を強めて追及モードに入る。

どうやらアダルトDVDを撮影したりラブホテルに女の子を派遣するデリバリーをやっているということで話が進んでしまっているらしい。

「だから違うって、アイドルだって言ってるでしょ」と声を荒げて女社長はおもむろに黒い大きなカバンを取り出す。

一体何が飛び出すのかと警官たちは顔を強張らせて緊張する。

緊迫した雰囲気の中女社長がカバンを開けると警官たちは「おお~っ」と感嘆の声を上げた。

中からは百枚は越えるCDが出てきたのだ。
東北ツアーの物販用のもので、今までに出した10枚のシングルと3枚のアルバムが20~30枚用意されている。先程話していた2つの映像作品のDVDもある。

警官たちは目をパチパチさせてジャケットの写真と後ろの座席のふたりを見比べる。間違いなくあやのんとちはるんだ。昔のシングルは、大勢いた頃の写真である。

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