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地下アイドルの休日

第4章 東北珍道中

運転手が気を利かせてライブでも人気の歌をカーナビのオーディオに流すと警官たちもその歌が気に入ったような様子である。

絶妙のタイミングで機材業者の車が到着した。

「遅くなりました、申し訳ありませんでした」と責任者が女社長にペコペコと頭を下げて、他のスタッフは慌ただしく車の後ろの荷台に音響機器や楽器を積み込んでいく。

警官がスマホでフルーティと検索すると、あやのんとちはるんの写真や多くのライブ情報が出てきた。明日・・もう今日か、からは東北のイベントに出演するのも間違いない。

「いや~、アイドルさんでしたか。最初っから言っていただければ、アハハ」と3人の警官は盛大に笑う。

「この~、全く聞く耳持たなかったくせに」と女社長は拳を握りしめるが、「まあまあ」とフルーティのふたりは女社長の拳を抑えて笑う。

これで疑いは晴れたし事は終わると思ったがそうもいかなかった。

「スゴいアイドルさんだということはよく分かりました」

「最後に皆さんの所持品だけ確認させてください」

「ご存知のこととは思いますが、最近は大物の芸能人が薬で問題を起こすこともありまして・・皆さんに限ってはそんなことはないと思いますが、一応確認させていただくことになっておりまして・・」

そういえば最近は大物芸能人が覚醒剤取締法違反でパクられるのが後を絶たない。それを持ち出して警官たちは所持品検査を求めてきた。

職務質問をしたからには、見当違いでした、あっ、そうかじゃ済まなくて疑わしきは全部確認しなければ収まらないのが警察のセオリーらしい。

「なんで、疑いが晴れたんだからいいじゃん」

「見当違いだからってまた違う言いがかりをつけるなんてやり方はよくないよ」

ちはるんとあやのんは頑として所持品検査を拒否する。

「なんで、何かヤバイもんでもあるんですか?」

女性警官は恐い顔をしてふたりを睨みつけるが、ふたりも負けるもんかと睨み返す。

「あ~、もう、早く終わらせて東北行かなきゃなんないんだから協力しなさい」と女社長に一喝されてあやのんとちはるんはシュンとする。

「女なんだから秘密のひとつやふたつは持ってるもんよ。そんなんでジタバタしてたら女が廃る。その代わり、一応女のコなんだからあなたが確認なさい」

と女社長は女性警官を指差す。

「男ふたりは運転手と車の中をさっさと確認する」

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