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地下アイドルの休日

第5章 沖縄珍道中

不思議そうにしているちはるんを見てあやのんは吹き出した。ツボにハマってしまった。

「誰だよ、瀬古って。そんな人は出てこないわ」

「だって、せごどんって・・」

「あのねえ、西郷って書いて薩摩とかではせごって読むの。番組名だって西郷どんだろうが」

「へ~、そうなんだ」

そうだ、コイツは字を見ないで耳で聞いて覚えるタイプだったとあやのんは思った。

「でもさ~、西郷さんって偉い人なのにどんなんてバカにした言い方はよくないよね~、丼じゃないのに。ドン西郷ならまだ分かるけどさ」

「バ、バカヤロー」

ちはるんのあまりの大ボケがツボに入ってしまってあやのんは一時喋れなくなった。

「どんっていうのは薩摩とかでは殿とか様みたいに相手を尊敬して使う言葉なの。丼も違うし、ドン西郷って何だよ、何かの悪の組織の大ボスみたいになっちゃってるだろうが」

けっこう笑い上戸のあやのんの笑いが治まると、ちはるんは深刻な顔をして溜め息を吐いた。

自分のあまりの大ボケぶりを悔やんでのことかなとかちょっとバカにして笑い過ぎたかなとかあやのんは心配したが全然違った。

「明後日は山田選手に告られるでしょ」

完全に告られることで話が進んでいる。あやのんがツッコむのも耳に入らないらしくてちはるんは続ける。

「恥ずかしながら何も経験ないんで、キスの仕方も知らないんだ。あやのん、練習させて」

ちはるんはあやのんの手を取って瞳を潤ませる。キスの練習なんて、どっかのコンビのお笑いネタみたいになってきた。

「バ、バカヤロー。酔っ払い過ぎだ。悪いことは言わん、早く寝なさい」

というあやのんの言葉も届かないのか体を密着させてちはるんの唇が迫ってくる。

「バ、バカヤロー」

あやのんにしばき倒されるとちはるんはあやのんのベッドを占領して大イビキで眠ってしまった。

「あ~あ、人のベッドで寝ちまいやがった」

初めての唇が奪われなくてよかったと思いながら、浴衣もはだけてあられもない格好で眠るちはるんを呆れて見る。

「う~む、なかなかいい体してるわよね」

露になった大きな胸、下着も見えちゃってる太もも、キュートなお尻を見てあやのんはドキドキする。

男だったら絶対襲っちゃうようなシチュエーションである。

「落ち着け、わたし。何を考えてるのよ」

あやのんは邪気退散のお祓いを始めるのであった。

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