
『untitled』
第5章 赤いシクラメン
今日はいつにも増して撮影スタジオの隅で様子を見守る翔の表情が固い。
「休憩、入りまーす!」
俺は翔のいる場所へと歩みを進める。
「松本さん」
俺を遠慮がちだけど……
確実に回りに聞こえるボリュームに無視することが出来ず俺は振り返る。
そして翔も俺の元への歩みを止めた。
「あの……今日、聞いてます?」
「えっ?」
「ディレクターさんと監督さんとの食事会」
「いや、聞いてません。櫻井、聞いてる?」
俺たちの会話を聞いてた翔は既にタブレットでスケジュールを確認している。
「いえ、そのような予定は……」
翔のスケジュール管理は完璧だし、抜けているなんてことはあり得ない。
「あっ、私もさっき言われて……松本さんも来れますよね?」
あまりいい噂を聞かない人とは行きたくないけど
、ディレクターさんと監督さんが参加するとなれば話は別。
みんな同じ目標に向かって撮影に挑むためにはコミュニケーションは必要不可欠。
「はい、大丈夫です」
「良かった!じゃぁ、楽しみにしてますね」
ニコッと笑うと歩き出した……
と思ったら翔の横で止まると少し背伸びをして耳打ちをした。
なに、俺の翔に触れてるんだ……
そして一瞬、見開いた翔の目。
アイツ……なにを言った?
「楽屋に戻るぞ」
怒りを何とか抑え、固まる翔の肩を歩きながらポンと叩くと、そのまま楽屋に戻った。
コンコン…
「失礼します」
いつもの冷静な翔の声と共に楽屋のドアが開く。
「翔、さっき……なに言われた?」
自分でもわかるほど低い声。
初めて知った自分の嫉妬心。
そしてそれは今まで翔がずっと抱え込んできたモノ。
仕事と割り切っていたとしても、翔の方が何倍も何十倍も辛い思いをしてる。
「なに言われたって……」
それでも我慢できない怒りをぶつけようとしたら、涙を浮かべながら拳を握りしめる翔の姿に容易く止まった。
「休憩、入りまーす!」
俺は翔のいる場所へと歩みを進める。
「松本さん」
俺を遠慮がちだけど……
確実に回りに聞こえるボリュームに無視することが出来ず俺は振り返る。
そして翔も俺の元への歩みを止めた。
「あの……今日、聞いてます?」
「えっ?」
「ディレクターさんと監督さんとの食事会」
「いや、聞いてません。櫻井、聞いてる?」
俺たちの会話を聞いてた翔は既にタブレットでスケジュールを確認している。
「いえ、そのような予定は……」
翔のスケジュール管理は完璧だし、抜けているなんてことはあり得ない。
「あっ、私もさっき言われて……松本さんも来れますよね?」
あまりいい噂を聞かない人とは行きたくないけど
、ディレクターさんと監督さんが参加するとなれば話は別。
みんな同じ目標に向かって撮影に挑むためにはコミュニケーションは必要不可欠。
「はい、大丈夫です」
「良かった!じゃぁ、楽しみにしてますね」
ニコッと笑うと歩き出した……
と思ったら翔の横で止まると少し背伸びをして耳打ちをした。
なに、俺の翔に触れてるんだ……
そして一瞬、見開いた翔の目。
アイツ……なにを言った?
「楽屋に戻るぞ」
怒りを何とか抑え、固まる翔の肩を歩きながらポンと叩くと、そのまま楽屋に戻った。
コンコン…
「失礼します」
いつもの冷静な翔の声と共に楽屋のドアが開く。
「翔、さっき……なに言われた?」
自分でもわかるほど低い声。
初めて知った自分の嫉妬心。
そしてそれは今まで翔がずっと抱え込んできたモノ。
仕事と割り切っていたとしても、翔の方が何倍も何十倍も辛い思いをしてる。
「なに言われたって……」
それでも我慢できない怒りをぶつけようとしたら、涙を浮かべながら拳を握りしめる翔の姿に容易く止まった。
