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Living with Simone アイツと暮らせば

第1章 出会いという名の禍

暫くは ひとりで家に帰るのが怖くて仕方なかった。

車に野球のバットを乗せといて、帰宅後すぐにそれを持ってですね、自宅の周りを一周するのがミカの習慣となりました。

この時期かなーり神経過敏になってたんだよね。


——ピンポーン。

ある夜、誰も来る予定が無い筈なのにドアチャイムが高らかに鳴った。

ミカは恐ろしすぎて、細くか弱いその手にバットを握りしめて、外をそっと覗いた。

覗いたけど誰も居ないんですよ。

その時点で、軽くパニック。

家じゅうの戸締りをバタバタと確認している途中にもチャイムがなるんですよ。

――― ピンポーン ピンポーン ピ・ピピンポーン ピンポンピンポン

なにスクラッチしちゃってんだよ?って感じの連続チャイム待ったなし。

慌てて玄関に戻って覗くと、やっぱり誰も居ない。

…マジでちびる5秒前。

お化けだったら喜んで招き入れてやんよ!
と思ったんですの。

…でも、一応玄関脇で隠れてみたの。

するとまた鳴りやがる。

慌ててドアの窓から覗いたミカ。


そしたら、アイツがへらへら笑って立ってたよ。

「俺だよバーカ!ビビってやんの。」

ええ、シモーネね。

ホッとしたのと、腹立たしさでバットを持ってブルブル震えるミカを見て、流石のアイツも良心が咎めたらしい。


「お前…今超~ぶっさいくな顔してっぞ?」
(以下 ミカの脳内変換通訳でお伝えします:大丈夫か?どうした?)

「うん…判ってる」

涙なんだか鼻水なんだか、冷や汗なんだか分からない液体が、止めどなく流れてたんだと思うの。

「腹減った。飯!」
(脳内:心配だから様子を見に来た。)

何も言っとらんのに,
勝手にずんずんと家に入って来た。

ミカは震えが止まらない状態で憎まれ口も言えなかった。
こんなふざけて書いとるけど、当時は精神的にヤバかった。

「毎日飯ぐらい作っとけよ。ブス!」
(脳内:様子見に来てやるよ。)


家に誰か居てくれるだけで安心。

それがそもそもの誤りだった。

シモーネは約束通り…正しくは、それ以上にミカの家に入り浸るようになっちゃった。


あの時は、こんなに長い間一緒に住むことになるとは、
思いも寄らなかったよ。


ホント。




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