Living with Simone アイツと暮らせば
第16章 スキンヘッドの蝶々
あんまりその時の記憶無いんだけど、
泣きながらダンに電話してた。
「ごめん…助けて…もう無理。」
ダンが忙しいのに仕事抜け出してくれて、
レストランで待ち合わせしたんだけど、
もうね…ダンの顔見たら、安心して
ビービー泣いてた。
「駄目だ…今回はホント無理。もう嫌だ…限界。」
疲労困憊で、感情ダダ漏れ。
頼んでも居ないのに店員が
片手いっぱいの紙ナプキンを持って来てくれた。
「ミカはそれでどうしたいの?」
ダンはとっても冷静だった。
「シモーネを家に入れたくないし、
もう男娼館にもしたくない。」
何度追い出しても帰って来たりの“悪質な”前科があるので、割と簡単にできるって教えてくれた。
100ft接近禁止。
学校の運動場ぐらいの広さ。
取り合えず仮の接近禁止を貰った。
もうすぐに引っ越そうってなって、
アレックスやその他大勢来て引っ越しを手伝ってくれた。
「申し訳ないんだけど、流石に限界。」
普通の会社もそうだけど、
ミカの職場は特に厳しかったの。
部下の自殺や大きな事あったし、今回で
下手したら、ビザだって取り消されちゃう。
「そうだよな…判った。」
アレックスはそれ以上は何も言わなかった。
正直この時期は、ミカはかなり荒んでた。
アレックスにシモーネの少し残った荷物を全て託した。
「家族でも何でも無いんだから気に病むな!何年もアイツの面倒見て来たし、彼氏でもさっさと作れ!」
アレックスがにこにこしながら言った。
…あれ…やっぱあの日のこと忘れちゃったのか?
それならそれで、こちらも好都合。
「うん…暫くゆっくり一人を楽しむよ。
もう疲れちゃったから。」
あいつと居た数年は、目まぐるしく色々なことが起きた。あいつのお陰で沢山の友人が出来たのも事実。
本当に本当に疲れちゃったの。
アイツとの奇妙な同居生活は、約3年で呆気なく終わった。