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恋人⇆セフレ

第9章 「初恋の」




パチ。



朝の柔らかな光で目が覚めた。



今までにないほどスッキリと起きれた朝だけど、一度だけ欠伸を零す。
今日は曇りだと言われていたのに、窓越しから見る空は雲ひとつない快晴だ。



普段は気にもしない鳥の囀りも耳に心地いい。




「ん…」



と。心地の良い気怠さに微睡んでいると、隣から聞こえてきた寝息に首を動かした。



その瞬間目に入ったのは、意外とあどけない伊織の寝顔。



「可愛いな」


ふ、と思わず呟くと、身動ぎした伊織はシパシパと瞼を瞬かせ目を覚まし、フニャらと笑った。



「おはようございます」


「…はよ」


幸せだと、柄にもなく思う。
ただの朝の挨拶なのに、起きてから笑顔で抱きしめてくれるのが、こんなに嬉しいなんて。



そんな心地の良い空気の中、ふわふわと後ろ手で頭を撫でられて、また微睡そうになる。



「声、枯れちゃったね」


「誰かさんが何回も抱くからな」


「辞めようとしたら泣いたのって誰でしたっけ?」


俺だな。


ギロ、と赤くなった顔のまま下から睨むと、伊織は低く笑って俺を腕の中に再び閉じ込めた。


光に当たると、透き通った金色になる伊織の髪。
寝起きはトロンと垂れ目気味になる瞳。
ふわふわの髪は、寝癖が付きやすいこと。
寝起きの声は、少し低くて掠れ気味なこと。
素肌は驚くほど温かいこと。



知れば知るほど、全てが愛おしくなる。



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