恋人⇆セフレ
第2章 お前がそうするなら、
「時々一緒に来てた人と何かあったんですか」
「…!」
俺の反応を見た男が、ふっと笑って眉を下げた。
ーーーやっぱり、この男も俺がこっち側なのだと気付いていたらしい。そして、真木のことも。
「自暴自棄になったのなら、全部俺にぶつけてください。俺…貴方が知らない奴とそういうことするの、耐えられないです」
「は、」
そんな言葉、いつもなら心の中で余計なお世話だと罵倒するところだ。でも、この男の言葉に、強気でいることはできなかった。
「貴方の本当の声を聞かせてください」
両肩を掴んでいた手がするりと落ちて、俺の手を優しく握る。
馴染みのない体温は違和感しかないのに、払うことはできなくて。
グッと込み上がる涙を我慢していれば、真っ直ぐ俺を見据える二重の瞳が、いつもと同じ柔らかなものになった。
それに安心して、震える唇をゆっくりと開く。
「……俺、捨てられたのかもしれない」
「なら、代わりに俺が大事にします」
「本当は俺、口が悪いから愛想を尽かされたのかもしれない」
「全部俺が受け止めます」
「っでも俺、真木しか考えられない」
もう認める。認めてやる。真木がどうしようもなく好きだ。
どんな我儘だって、俺の気まぐれだって優しく受け止めてくれた。そんなアイツに甘えきって、今回もどうせ迎えに来てくれるって思い上がってたんだ。
でも、こんな俺をずっと好きでいてくれるわけなかったんだ。
「…知ってます。俺は一途な貴方を好きになったんです。でも、これからは俺も見て欲しいです」
ギ、と強く噛んでいる俺の唇に、柔らかいソレが軽く触れる。
馴染みのない体温。真木とは違う感触。
だけどどこまでも優しいソレに、俺は身を委ねた。