恋人⇆セフレ
第10章 真と偽
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ガチャンッ
「うわ、やっちゃった」
コーヒーと割れたマグが足元に広がったのを眺めて、溜息をこぼす。
ああ、お気に入りだったからちょっとショックだなあ。
「不吉だな、なんか」
割れたマグを見ていると、嫌な予感がぐるぐると頭の中で回りだす。昨日、志乃さんと電話してて突然現れたあの人。
あの時のあの人の雰囲気といい、志乃さんと連絡が取れていないことも気がかりだ。
もしかしてーー…
「…駄目だ。こんな思考でいると現実になりかねない」
かぶりを振りながら蹲み込んで、散らばったマグをそろそろと回収する。
ネガティブ思考は俺には向いていないし、こんな思考を持つこと自体志乃さんに失礼だ。
うん、そうだ。この片付けが終わったら、志乃さんに連絡をしよう。
ついでに、帰ったら一緒にお揃いのマグを買いに行きましょうねって送りたい。
早く会って抱きしめたいって。