テキストサイズ

恋人⇆セフレ

第11章 空白





よく考えなくてもわかることだった。


志乃さんが何も言わずに真木さんのところに戻るわけがないって。


なのに、その答えに行き着かなかったのは、俺が自分のことしか考えていなかったからだ。



一番辛かったのは志乃さんだったのに、季節が変わるほど彼を一人にしてしまっているという事実に、胸が痛いほど締め付けられる。



『伊織、好きだ』



あの日、耳まで赤くして、拗ねたような顔で告白をしてくれた志乃さんを思い出す。
その言葉を引き出すのに、きっと幾つもの葛藤があったはずなのに、俺はそれを疑ってしまったんだ。



あまりにも子供すぎた。




「ありがとう里君。それから、君に言わないといけないことがある」





一度深呼吸をして、目の前の里君を見据える。



彼も何かを悟ったのか、不安そうに顔を曇らせている。
その顔をますます暗くさせてしまうかもしれないけれど、このことは真木さんにも伝えてもらわないといけない。



悔しいけれど、きっと真木さんなら、探せばすぐに志乃さんを見つけられるだろうから。




ーーーーいつの間にか外は土砂降りで、窓を激しい雨が叩いていく。



暗くなった店内はオレンジ色の照明が目立ち、里君の泣きそうな顔を柔らかく照らした。



里君に全てを話をしながら、どうか。と願う。



全部全部、晴れますようにと。




ストーリーメニュー

TOPTOPへ